「商標法」第32条登録商標が先行著作権を侵害している場合についての理解と活用–商標第47877618号「皓乐美H.LEMEI+図形」の無効審判を例として

2025/05/14
2025/05/14

無効審判の概要

1.係争商標の詳細

被請求人:揚州新飛航空旅遊製品有限公司
第47877618号商標
商標

商品:メイクアップ用漂白剤、ボディーローション、ハンドクリーム、動物用化粧品、化粧品、バスソープ、ハンドソープ

請求人:広東喜之郎集団有限公司
著作権登録作品

第6091459号商標
商標

商品:ビール、ノンアルコール飲料、フルーツティー(アルコールを含まない)、ピーナッツミルク(ソフトドリンク)、ジュース、ミルクティー(ミルク以外が主)、果物の粉、植物飲料、豆類飲料、ジンジャーエール、ドリンク剤

第6127043号商標
商標

商品:製剤の清掃、香料、歯磨き粉

2.争点

  1. 係争商標は無効審判請求人の「优乐美U.loveit奶茶+図形」作品の先行著作権を侵害しているか。
  2. 無効審判請求人の第6091459号商標「优乐美U. loveit」は
  3. 「ミルクティー(ミルク以外が主)」商品における馳名商標と認定されたことがあり、係争商標の登録は無効審判請求人の馳名商標のコピーまたは模倣であるか。
  4. 係争商標と無効審判請求人の第6127043 号商標「优乐美U. loveit」は同一又は類似の商品に使用された近似商標に該当するか。
  5. 無効審判被請求人の出願には悪意があるか。

無効審判の結果

  1. 無効審判請求人の作品「优乐美U. loveit奶茶+図形」は、斬新な構成と強い独創性を有し、著作権法で規定される著作物の独創性の要件を満たしているので、中国著作権法が保護する美術作品に属する。
  2. 本件の証拠と審理により、無効審判請求人は「优乐美U. loveit奶茶+図形」の美術作品で先行著作権を有することが証明された。
  3. 係争商標の登録出願日前に、無効審判請求人は「优乐美U. loveit奶茶+図形」を宣伝目的で使用しており、被請求人は、係争商標が被請求人が独自に創作して完成されたものである証拠を提出していなかった。したがって、被請求人は無効審判請求人の作品「优乐美U. loveit奶茶+図形」を知っていた可能性がある。
  4. 係争商標は、構成要素、デザイン技法及び視覚効果において、無効審判請求人の作品「优乐美U. loveit奶茶及图」と類似しており、これは実質的な類似を構成している。
  • 被請求人が無効審判請求人の承諾を得ずに係争商標を登録出願したことは、無効審判請求人の先行著作権を侵害しており、「商標法」第32条の「商標登録出願は他人の先行権利を害してはならない」という規定を違反している。
  • 商標法第32条、第44条第3款、第45条第1款及び第2款並びに第46条の規定により、当該商標を無効とする。

事案の分析

  • 本件において、係争商標の特徴部分である「皓乐美」の漢字は、無効審判請求人の引用商標「优乐美」と最初の一文字が異なり、両者には称呼、意味などに差異があり、無効審判請求人は第3類において先行商標権を有していない。
  • 第3類の「化粧用漂白剤、ボディーローション、ハンドクリーム、動物用化粧品、化粧品、バスソープ、ハンドソープ」は無効審判請求人の馳名な「ミルクティー」商品とは機能及び用途、販売場所、消費者などで大きく異なっており、関係公衆は一般的に上記商品間に関連性があるとは思わない。
  • 本件では、被請求人が自分の名義で80件近くの商標登録を出願したが、商標を冒認する悪意は明らかでなかった。
  • 結論として、商標法第30条、第13条及び第44条を本件に適用することは難しく、本件の難点は、係争商標の登録が商標法第32条の規定「商標登録出願は他人の先行権利を害してはならない」に違反するか否かにあった。

登録商標が他人の先行著作権を侵害していると判断するには、以下の要件を満たす必要がある。

  1. 登録商標の出願日前に、他人が中国著作権法で保護される作品を有し、著作権を有していること
  2. 登録商標の出願人が他人の先行著作権と接触する可能性があること
  3. 登録商標と他人の先行著作物が実質的な類似性を構成すること
  4. 商標の登録出願が著作権者の承諾を得ていないこと

本件において、無効審判請求人が「优乐美U. loveit奶茶及图」の著作権登録をしたのは2008年であり、係争商標の出願日よりずっと早かったため、係争商標と無効審判請求人の美術作品が実質的な類似性を構成し、かつ被請求人が無効審判請求人の先行著作物に触れる可能性があるという主張が、本件の突破口となった。

係争商標と無効審判請求人の美術作品を、全体の外観、構図、漢字デザイン、英字デザイン、図形線処理、色彩等の表現形式において詳細に全面的に分析し、係争商標の出願人が無効審判請求人の先行著作権に触れる可能性が高いことを証明するために、大量の知名度に関わる証拠を提出した。

最終的に、中国国家知識産権局は、被請求人が無効審判請求人の承諾を得ずに係争商標の登録出願を行ったことは、無効審判請求人の先行著作権を侵害し、商標法第32条の「商標登録出願は他人の既存の先行権利を害してはならない」という規定を違反しており、商標法第32条により係争商標を無効とした。

以上、著作権と商標権は異なる法律により規定されているが、商標権の場合、先行商標権がなく、商標法第30条及び第13条により主張ができない場合、権利者は、先行商標が中国の著作権法により保護される著作物に属するか否かを評価し、商標法第32条の「商標登録出願は他人の既存の先行権利を害してはならない」という規定を味方につけることが検討できる。

著者:李娜、品源法律事務所

    

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