性玩具の特許出願について

2025/12/17
2025/12/17

中国専利法第五条第1項への挑戦における対応戦略と実践

はじめに

性玩具の中国における特許出願は、審査過程において特有の課題に直面しています。中国専利法第五条第1項では、「国の法律、社会公衆道徳に反する、又は公共の利益を害する発明創造に対しては、特許権を付与しない」と規定されています。この条項は性玩具産業における特許出願の重要な障壁となっています。社会の意識が次第に開放され、性玩具産業が発展する中で、この条項を正確に理解し対応することは、この分野における企業や発明者の革新的な成果を保護する上で極めて重要であると考えます。

中国専利法第五条第1項の理解

中国専利法第五条第1項は、特許を受ける発明創造が社会の基本的な価値指向に合致することを保証することを目的としています。ここでいう、「法律に反する」とは、一般的には、発明創造そのものの目的が法律で禁止されていることを指します。「社会公衆道徳に反する」とは、発明創造が社会で普遍的に認められている道徳観念や行動規範に反することを指します。「公共の利益を害する」とは、発明創造の実施または使用が公衆または社会に損害をもたらし、国家および社会の正常な秩序に影響を与えることを指します。
性玩具の特許出願の場合、審査は主に社会公衆道徳に反するかどうかに焦点が当てられます。

社会道徳は不変的なものではなく、社会の発展や文化的概念の変化とともに進化します。
異なる歴史的時期や地域環境において、同一種類の発明創造が社会公衆道徳に反するかどうかの判断は異なる場合があります。たとえば、過去には性に関する特定の製品や技術が社会公衆道徳に著しく反していると考えられていたかもしれませんが、現代社会では、性的健康に対する人々の態度が徐々に自由化されるにつれて、こうした製品への受容度が高まっています。

性玩具に関する特許出願の事例分析

某テクノロジー企業は、2021年11月26日に「マッサージ機構及びマッサージ器」(出願番号2021229397679)と題する実用新案を出願しました。

このマッサージ機構は、開口部を有する可変マッサージキャビティを備えた弾性マッサージスリーブと、開口部方向に対応するキャビティ内部の押圧機構を備え、押圧機構はマッサージ中に開口方向に向かって往復運動します。

審査部門は2022年4月29日、本発明は非医療用人工性器または代替品であり、中国専利法第五条の規定に違反するとして拒絶査定を下しました。

本願の核心的な争点は、人工的な性器または代替品に該当するか否か、そして社会公衆道徳に反するか否かであります。出願人は、本技術案は一般的なマッサージ機能を実現し、人体のあらゆる部位に作用可能であり、明細書において性玩具として言及されておらず、本製品は人間の性器の外観を有してもいなければ、人間の性器を代替する機能も有しておらず、単に女性の性敏感部位に対する物理的刺激を補助するツールであり、人工的な性器の代替品ではないと主張しました。さらに出願人は、性玩具が公衆に販売されているということは、公衆がそのような製品に一定の受容性を持っていることを示唆しており、本発明は社会公衆道徳に反するものと見なされるべきではないと指摘しました。

拒絶査定不服審判手続きにおいて、合議体は出願内容を再評価し、本技術案は、当該製品が性玩具として使用されることを特定しておらず、人間の性器の外観や機能を有していないと判断しました。したがって、人工性器または代替品ではないと認定され、拒絶査定は最終的に取り消されました。

中国専利法第五条第1項に基づくオフィスアクションへの対応戦略

技術の本質の明確化:このようなオフィスアクションを受けた場合、特許の技術案が人工性器またはその代替品に向けられたものではないことを主張するのが望ましいです。

前述のマッサージ機構およびマッサージ器の出願を例に挙げると、マッサージ機能は人体の複数の部位に作用し、性器専用に設計されたものではなく、性器の外観や主な機能を有していないという、マッサージ機能の汎用性を強調する必要があります。

非性機能の強調:当該技術が性玩具への応用可能性に加えて、性機能以外の機能を有する場合は、オフィスアクションへの応答において、これらを強調する必要があります。例えば、一部のマッサージ器は、血行促進や筋肉疲労の緩和といった一般的なマッサージ機能を備えている場合があります。これらの機能の存在を裏付けるために、関連する科学的証拠や研究報告を提示することができます。

社会的意識の変化を示す証拠:性玩具に対する社会的な受容度が高まっていることを示す証拠は有用です。例えば、毎年4月に開催される「上海国際成人生活及び健康産業博覧会(API EXPO)」などの成人向け製品展示会の開催は、こうした製品が社会にますます受け入れられていることを証明しています。オンライン・オフライン両チャネルを通じた一般販売は、消費者が特別な制限なしに自由に購入できることを示しており、性玩具に対する公衆の意識が肯定的なものに変化しており、こうした製品がもはや普遍的に社会公衆道徳に反すると見なされていないことを示しています。

中国専利法第五条第1項違反に対する防止策

センシティブな表現の回避:特許出願においては、過度に直接的でセンシティブな性的な表現は避けたほうがよいです。例えば、製品の機能を説明する際には、性的な意味合いを暗示する言葉ではなく、客観的かつ科学的な言葉を用いる必要があります。

多様な機能を強調する:発明の多様な機能、特に性的な機能以外の機能は、明細書において強調すべきです。製品がヘルスケアや日常ケアなどの他の機能を有する場合は、関連する実験データや研究報告書を裏付けとして、それらを詳細に説明する必要があります。

特許請求の範囲を合理的に定める:例えば、刺激装置の特許出願の場合、特許請求の範囲は性的刺激の機能に過度に焦点を当てるのではなく、独自の構造設計、新しい動作原理など、より広範な技術革新に焦点を当てたほうがよいです。そうすることで、特許請求の範囲が社会公衆道徳に反する疑いを生じさせることなく、発明を保護するのに十分な範囲を確保することができます。

まとめ

性玩具の特許出願は、中国専利法第五条1項の規定により多くの課題に直面していますが、効果的な対応策と予防策を講じることで、特許保護が受けられる大きな機会が依然として存在しています。オフィスアクションへの対応においては、技術案自体、社会大衆の反応、業界の発展状況、類似事例など、複数の側面から特許出願の合法性を裏付けることができます。一方、明細書作成技術を可能な限り向上させることで、中国専利法第五条1項に符合しないリスクを軽減することができます。社会概念のさらなる自由化に伴い、今後、性玩具の特許出願は、中国専利法第五条1項に該当する特殊な分野とは見なされなくなることでしょう。

    

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