中国知識産権局事務室は2025年11月21日に「商標の使用管理の強化に関する通知」を公布しました。
商標の使用管理を強化し、消費者の利益を保護することは、知的財産強国の建設を推進する上で重要な内容であるとともに、『中華人民共和国商標法』(以下「商標法」という)を適切に実施し、商標管理の水準を全面的に向上させるための重要な施策でもあります。
本通知は、7つのタイプの違法・不正な商標使用行為を重点的な取締対象とし、商標使用環境の健全化を図り、商標権侵害行為を未然に防止するとともに、各主体による商標の規範的な使用を促進することを目的としています。
1.欺瞞性などの禁止事由を有する未登録商標の使用について
本通知では、商標法第10条第1項第7号の規定に違反し、欺瞞性を有する未登録商標を使用し、公衆に商品の品質等の特徴または産地について誤認を生じさせるおそれのある違法行為を重点的に規制することを明確にしています。
一つ目は、「専供(限られた人にのみ供給)」「特供(特定の人にのみ供給)」「極品(「最高級品)」「国」などの文言を含む未登録商標を使用し、商品の供給ルートや品質について公衆に誤認を生じさせる行為です。
例えば、以下のような場合がこれに該当します。
![]() | ミネラルウォーターに「極品(「最高級品)」商標を使用した場合 |
| | 白酒に「専供(限られた人にのみ供給)」「特供(特定の人にのみ供給)」「国」などの商標を使用した場合 |
![]() | レストランサービスにおいて「国宴」商標を使用した場合 |
二つ目は、「富硒(セレン豊富)」「有機」「無添加」「100%」などの文言を含む未登録商標を使用し、かつその表示に係る商品の実際の属性が当該内容と一致しないことにより、商品の主要な原材料や成分等の特徴について公衆に誤認を生じさせる行為です。
例えば以下のような場合がこれに該当し、いずれも商品の実際の属性が商標における文字又は図形が示す意味と一致しない場合が該当します。
![]() | リンゴ商品に「富硒(セレン豊富)」商標をしようした場合 |
![]() | 新鮮な野菜商品に「有機」商標を使用した場合 |
| 醤油商品に「無添加」商標を使用した場合 | |
| パン商品に「100%」商標をしようした場合 |
三つ目は、地名、年代、または「手作り」「手打ち」等の表示を含む未登録商標を使用し、商品の産地、製造時期、製造方法等の特徴について、公衆に誤認を生じさせる行為です。
例えば以下のような場合が該当します。
| タイル商品に「ローマタイル」商標を使用しているものの、当該タイルがイタリア・ローマ産ではない場合 | |
![]() | 紅茶に商標を使用しているものの、当該紅茶が1837年に生産されたものではなく、またはその提供者が1837年に創業されたものでもなく、かつ当該商標中の「THE FINEST TEAS OF THE WORLD」(「世界で最も優れた茶」)という表示にも根拠がない場合 |
![]() | 白酒に「手工匠酒」と記載された商標を使用しているものの、当該白酒が手作業で醸造されたものではない場合 |
| 鉄鍋に「手打宗師」商標を使用しているものの、当該鉄鍋が手作業で製造されたものではない場合 | |
![]() | 乾麺に「来碗手擀面」商標を使用しているものの、当該乾麺が手延べ・手打ちで製造されたものではない場合 |
二 登録商標の欺瞞的使用
本通知では、登録商標を欺瞞的に使用する行為であって、商標法第49条等の規定に違反する2つのタイプの違法行為を重点的な規制対象とするとしています。
一つ目は、登録商標を商品名称、広告宣伝文句又は商品の包装・装飾等と組み合わせて使用することにより、商品の品質、産地、製造方法等の特徴について公衆に誤認を生じさせる行為です。
| 登録商標 | 実際の使用 | |
| (意味:新鮮) | (意味:農家直送の新鮮な地鶏卵) | 公衆に地鶏卵であると誤認を生じさせる場合 |
| 春雨商品において、公衆に地理的表示産品である「龍口粉絲」であると誤認を生じさせる場合 |
これらの登録商標はいずれも、中国国家知識産権局により無効宣告されています。
二点目は、登録事項を無断で変更することにより、商品の品質等の特徴について公衆に誤認を生じさせる行為、又は他人の商標にフリーライドする目的で登録事項を無断で変更する行為です。
| 登録商標 | 実際の使用 | |
![]() | ![]() | 商標に「緑色」「エコ」「健康」などの文字を追加し、商品の品質について公衆に誤認を生じさせたため、当該事業者は、管轄する商標執行部門から、商標法第10条第1項第7号及び第52条の規定に基づき、行政処分を受けた。 |
| 登録商標 | 実際の使用 | |
| 某事業者は、潤滑油において、無断で商標を変更して使用し、BP股份有限公司の |
三 未登録商標を登録商標と偽って使用する行為
本通知では、商標法第52条の規定に違反し、未登録商標を登録商標であるかのように使用し、消費者の利益を害する違法行為を重点的な規制対象とするとしています。
例えば、某当事者は、自ら販売する「美肌素顔クリーム」に未登録の

さらに、当該当事者が化粧品等の商品について出願した
この行為に対し、管轄する執行部門は、商標法第52条等の規定に基づき、当該当事者に行政処分を科しました。
四 登録商標を使用すべき場合において使用しない行為
本通知では、商標法第6条の規定に違反し、登録商標を使用しなければならないにも関わらず使用していない違法行為を重点的な規制対象とするとしています。
これは主に、『中華人民共和国たばこ専売法』および『中華人民共和国たばこ専売法実施条例』の規定に基づき、紙巻たばこ、葉巻たばこ、包装された刻みたばこ、ならびに電子たばこ等の新型たばこ製品など、登録商標の使用が義務付けられている商品を重点的な監督対象とするものです。
例えば、某当事者は、紙巻たばこ商品について、それぞれ2文字からなる「WX」商標および「YZ」商標のみを登録していたにも関わらず、実際に製造・販売した紙巻たばこには、これら2つの商標を組み合わせた「WXYZ」商標を使用し、さらに「Z」の右上にのみ登録商標表示の「®」を付して、未登録の「WXYZ」商標をあたかも登録商標であるかのように使用していました。
この行為に対し、管轄する商標執行部門は、商標法第6条および第52条の規定に基づき、当該当事者に行政処分を科しました。
五 商業活動における「馳名商標」の表示の強調使用
本通知は、商標法第14条第5項の規定に違反し、「馳名商標」の表示を用いて宣伝を行う違法行為を重点的な取締対象とすること明確にしています。
『工業所有権の保護に関するパリ条約』などの国際条約によって確立された馳名商標の特別保護制度は、本来、商標の登録出願または使用に関する紛争が発生した場合に、一方の商標が馳名商標に該当するか否かを認定し、その上で特別な保護を与えるための制度です。しかし、一部の企業は馳名商標を一種の栄誉称号と誤認し、その広告効果を目的として馳名商標認定の申請を行うなど、本制度の本来の趣旨から逸脱した運用を行っています。
このような状況を是正し、馳名商標制度を立法趣旨に立ち返らせるため、中国は2013年の商標法第3回改正において、馳名商標の使用制限に関する規定を追加しました。すなわち、「生産者および事業者は、『馳名商標』の表示を商品、商品の包装もしくは容器に使用してはならず、また広告宣伝、展示会その他の商業活動において使用してはならない」と規定しました。
商標法により「馳名商標」の表示を宣伝目的で使用することが禁止されて以降、社会各界における馳名商標制度への理解はより正確になり、その運用も合理的なものとなりました。しかしながら、商業活動において「馳名商標」の表示を強調して広告宣伝を行う行為は依然として散見されます。
本通知は、知的財産権管理部門の職責に着目し、馳名商標として認定された実績を有する商標について、「馳名商標」の表示を広告宣伝に使用する行為を重点的に取り締まるよう求めています。
例えば、某当事者は、当該商標が権限を有する機関によって馳名商標と認定された後、自社ウェブサイトやソーシャルメディア上で「中国馳名商標」の表示を目立つ形で使用し、自社商品を宣伝・販売促進していました。この行為に対し、管轄する商標執行部門は商標法第14条第5項および第53条の規定に基づき、当該当事者に行政処分を科しました。
六 団体商標・証明商標の不正使用
本通知では、『商標法』、『商標法実施条例』、『団体商標・証明商標の登録および管理に関する規定』などの関連規定に違反して、団体商標・証明商標を使用する違法行為に対し、重点的に規制を行うことが示されています。
『商標法』、『商標法実施条例』、『団体商標・証明商標の登録および管理に関する規定』等の関係規定に基づき、使用管理規則を適法に制定することは、団体商標および証明商標の登録が認められるための必須条件です。中国国家知識産権局が公告した使用管理規則は、団体商標および証明商標の登録事項として、登録人、団体商標の構成員および証明商標の使用者を拘束する効力を有します。
使用管理規則には、当該団体商標または証明商標を使用する目的、手続、権利および義務、当該団体商標を使用する商品の品質または当該証明商標によって証明される商品の原産地、原材料、製造方法、品質その他の特定の品質、団体商標の構成員または証明商標の使用者が使用管理規則に違反した場合に負うべき責任、ならびに登録人による当該団体商標または証明商標を使用した商品の検査・監督制度等が含まれます。
登録人、団体商標の構成員および証明商標の使用者が関連する使用管理規則に違反した場合、いずれも責任を負わなければなりません。
例えば、某当事者は
また、別の事例において、某当事者は

七 商標代理機関による違法な代理業務
本通知では、商標法第19条の規定に違反し、商標代理機関およびその職員が悪意ある商標登録出願や悪意ある「3年不使用取消審判」などの違法行為を行うことに対し、重点的に規制を行うことが示されています。
商標代理機関およびその従事者は、商標サービス業界の専門機関および専門家として、商標代理業務に従事する過程において、相応の職業倫理と素養を備え、より高い注意義務および審査義務を負い、商標の違法・規則違反の使用行為の発生を予防・回避しなければなりません。
例えば、某当事者は、依頼人が使用を目的とせず、悪意を持って商標登録出願をしていることを知っていた、あるいは知るべきであったにも関わらず依頼を受け、その商標登録出願を代理し、さらに代理した一部の商標は明らかに欺瞞的であり、悪影響を及ぼすものでした。当該当事者は、管轄する商標法執行部門により、商標法第19条第3項、第68条および『商標出願・登録行為の規範化に関する若干の規定』第13条などの規定に基づき、厳しく取り締まられました。
また、「通知」では、業務メカニズムの整備、重点的な調査の実施、手掛かりの迅速な処理、コンプライアンスに関する指導の強化、総合的なガバナンスの強化、良好な環境の醸成という6項目の具体的な取組措置を示しています。これにより、中央と地方の連携をさらに強化するとともに、各部門間の連動を図り、各種取組が確実に効果的に実施されるようにすることで、商標を適法かつコンプライアンスに則って使用する良好な秩序の構築を推進し、人々の利益を保護することを目指しています。




















