-著作権事例-先行著作権により後願の商標の冒認出願を無効にした事例――商標無効審判事案

2023/10/24
2023/10/24

概要

無効審判請求人:広州茶理宜世餐飲管理有限公司(元請求人:湖南鼎太徳食品貿易有限公司)
被請求人:淩興旺
備考:広州茶理宜世餐飲管理有限公司は中国において著名なティーショップ「茶理宜世」を運営している企業です。

係争商標

使用商品:第21類 茶筒、紙コップ等

著作権作品

請求人の主な理由

被請求人は「茶理宜世」、「茶顔悦色」、「喜小茶」、「嫦娥の茶」など、多くの有名な飲料ブランドの商標を模倣しており、一貫して悪意を持っている。
係争商標は請求人の先行著作権を侵害している。
「商標法」第32条、第44条第1項などの規定に基づき、係争商標の無効宣告を請求する。

請求人が提出した主な証拠

  1. 被請求人が請求人やその他ブランドを模倣している状況
  2. 「茶理宜世」製品の宣伝パンフレット、Wechat公式アカウントでの宣伝のスクリーンショット、「大衆点評」(中国最大級口コミサイト)のプラットフォームでの販売状況
  3. これまでの関連行政決定・裁定
  4. 著作権作品登登記証書など

被請求人は規定された期限までに応答しませんでした。

本件の分析

本件のポイントは主に以下の二つとなります。

ポイント1

  1. 請求人が著作権を主張する「茶理宜世古風女像図」(請求人の上記著作権作品)はデザインされており、表現形式が独特で、一定の独創性があり、中国の著作権法で保護される作品に属する。
  2. 本件請求人は係争商標の出願日より前に「茶理宜世古風女像図」の美術作品の著作権登録を行っており、当該登記証書は本件作品の著作権が係争商標よりも先に享受されていることを証明する初歩的な証拠とすることができる。既存の宣伝・販売の証拠は、係争商標の出願前に、本件作品を商標として茶飲料などの商品上で公開、使用し、一定の使用規模を有していることを証明することができ、被請求人は係争商標の登録出願前に当該作品に接触する可能性が完全にある。
  3. 係争商標の図形部分は、請求人の著作権「茶理宜世古風女像図」の美術作品と表現形式、デザイン、視覚効果などがほぼ同じであり、「著作権法」の意味上での実質的な類似に属しており、被請求人はその図形のデザインについて合理的な出所を提供していない。加えて、被請求人の名義下にある第39109708号「茶理宜世及び図」商標異議決定書において、被請求人の上記商標登録は請求人の先行著作権を損害していると認定されていることが明らかになっている。

以上のことから、本件において、被請求人が請求人の許可または同意なしに、請求人が著作権を有する作品を商標として登録出願することは、請求人が主張する先行著作権を損害しており、「商標法」第32条の規定で禁止されている「他人の既存の先行権利を損害する」状況を構成している。

ポイント2

被請求人は自然人として、さまざまな商品や役務上で83件の商標登録出願をしている。その中には、「茶理宜世」「茶麗宜世江南茶」などの商標が20件余り含まれており、他にも関連する有名ブランドを模倣したものが多数含まれている。

被請求人は、本件期限内に係争商標の合理的な出所について抗弁せず、またその使用意図について立証していない。その行為は偶然とは言い難く、上記登録行為は他人のブランドを利用して不正な競争をしたり、不正な利益を得ようとする意図を持っている。

このような冒認行為は正常な商標登録の管理秩序を乱し、公平な競争の市場秩序を損ない、誠実信用の原則に反している。

加えて、第49368288号「茶麗宜世」商標異議決定書において、被請求人の行為は商標法の欺瞞的手段またはその他の不正手段による商標登録の禁止に関する立法精神に反すると認定されているため、係争商標の登録は「商標法」第44条第1項で禁止されている「その他の不正手段による」登録の状況に属する。

代表的事例としての意味

「商標法」第32条の「商標登録出願は他人の既存の先行権利を損害してはならない」という規定は、特定の主体が享受している商標権以外の現行法ですでに明確に規定されている先行法定権利と、「民法典」やその他の法律規定に基づいて保護すべき合法的権益を保護しています。

本条で規定される先行権利には著作権が含まれており、係争商標が他人の先行著作権を損害しているか否かを判断する場合には、まず著作権の帰属を確定する必要があります。著作権の帰属が確定された中で、接触可能性、実質的な類似、無許可などの条件に適合する必要があります。

「最高人民法院による商標の登録確定行政事件の審理に関する若干の問題に関する規定」第19条には、「商標の標識が著作権法で保護された作品を構成する場合、当事者が提供した商標の標識に関するデザイン原稿、原本、権利を取得した契約書、係争商標出願日前の著作権登記証書などは、いずれも著作権の帰属に関する初歩的な証拠とすることができる」と規定されています。従って、本件「茶理宜世古風女像図」の美術作品の登録日は係争商標の出願日よりも早いため、著作権帰属認定の初歩的な証拠とすることができます。

本件作品の公開発表や茶飲料などの商品での商業的使用は、著作権帰属の認定をより客観的にし、それに基づいて接触の可能性を合理的に推定することができます。「商標法」第44条第1項の「その他の不正な手段により登録する」という規定は、係争商標登録者が欺瞞的手段以外の方法で、商標登録秩序を乱したり、公共の利益を損なったり、公共資源を不正に占有したり、その他の方法で不正な利益を得ようとしたりするなど、他の不正な手段で登録をしたことを確実に証明する十分な証拠があることを指しています。

「不正な手段」と認定するかどうかは、登録出願した商標の表現形式や、商標登録者に関する情報、および使用意図などを総合的に考慮する必要があります。

実践の中で、本件被請求人は自然人として他人の飲料ブランドと同一または類似する商標を80件余り登録出願しており、その商標の独創的な工夫の出所について合理的な説明をしておらず、実際の使用意図が乏しく、「不正な手段」で商標登録した状況に該当します。

上記の法律条項によって保護される権利の性質は多少異なります。商標の登録が特定の主体の民事権益を損害し、商標登録者に事実としての使用意図がなく、商標登録秩序に混乱をもたらし、公正競争の市場秩序に影響を与える可能性がある場合、商標評審案件に対して上記の条項を並行して適用することができます。これにより、当事者の合法的権益を保護することができると同時に、不当な利益を得ようとしている当事者にも警告を与える役割を果たし、商標登録出願中の「傍名牌(有名ブランドの便乗使用)」「搭便車(フリーライド)」などの行為をより強力に阻止することができます。

悪意ある登録を規制し、合法的に先行権利を保護するために、これらの事件を審理するには、事件自体の事実を考慮するだけでなく、当事者の挙証や尋問状況を事件の審理状況と結び付けて、総合的に分析・検討・判断を行い、立法意図をよりよく実現し、正常な商標登録管理秩序と公平な競争の市場環境を維持しなければなりません。

出所:中国国家知識産権局商標局評審九処
https://mp.weixin.qq.com/s/Itzy1r0_eyYRHtSJFAhcjg
(翻訳・まとめ: 品源)

    

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