市場監督管理総局によると、2024年以降、中国の各級市場監督管理部門が調査処理した不正競争事件は合計11036件で、そのうち営業秘密侵害事件は120件でした。
市場監督管理総局は営業秘密侵害事件に関わる5件の典型的事例を近日公表しました。
それぞれの事例の概要を以下ご紹介します。
事例1:北京市通州区市場監督管理局の事例
A氏と某分析機器会社(B社)の営業秘密侵害事件
北京某分析機器会社(以下権利者と略称する)の前販売マネージャーであったA氏は在職中に妻と某分析機器社(以下B社と略称する)を設立し、B社の実際の支配者となりました。
A氏は権利者との間で締結した秘密保持契約と秘密保持管理制度の要求に違反して、権利者のクライアントの調達設備のニーズなどの営業秘密を権利者に知らせずに、勝手に権利者の販売マネージャーとしてクライアントと接触、交渉を行い、クライアントとB社との取引を成立させ、B社は136399.71元(日本円約300万円)の利益を得ました。
A氏とB社の行為は「不正競争防止法」の関連規定に違反しており、北京市通州区市場監督管理局は法に基づきA氏とB社に違法行為の停止を命じ、自由裁量の意見と結び付けて、A氏に対して罰金10万元(約220万円)の行政処罰を行い、B社に対して違法所得136399.71元の行政処罰を行いました。
事例2:上海市普陀区市場監督管理局の事例
C氏の営業秘密侵害事件
C氏は上海のあるファイナンスリース会社(以下権利者と略称する)の販売職を務めており、入社時に権利者との「営業秘密保護協議」に署名しました。
離職後も、C氏はファイナンス・リース・サービスの仕事に従事しており、業務を拡大するために、権利者のプロジェクト管理システムとスタッフのユーザー名、ログインパスワードの作成方法に精通していたことから、在職中の従業員のユーザー名とパスワードの解読に成功し、自分のパソコンを使って4回権利者のプロジェクト管理システムにログインし、権利者が作成した予算表、顧客評価報告書などの営業秘密を不正にダウンロードしました。
C氏の行為は「不正競争防止法」の関連規定に違反しており、上海市普陀区市場監督管理局はC氏に違法行為の停止を命じ、C氏に対して罰金15万元(日本円約330万円)の行政処罰を行いました。
事例3:江蘇省蘇州市太倉市市場監督管理局
無錫某自動車部品会社などが主体の営業秘密侵害事件
無錫某自動車部品会社(以下、D社)の匿名株主であるE氏、F氏、G氏は、かつて某自動車部品会社(以下、権利者という)に勤めていました。
入社時、権利者との間で「某行為規範」または「従業員ハンドブック」確認書に署名し、権利者が出入管理、書類の閲覧権限、図面の表示秘密などの方法でスプリングバンドの関連営業秘密を保護していることを知っていました。
E氏、F氏、G氏は秘密保持義務に違反し、スプリングバンド製品に関する生産技術資料を入手することを共謀し、D社に生産、販売しました。
関連製品は鑑定により、権利者と実質的に同様の秘密ポイントを持つスプリングバンド製品であり、権利者の直接的な損失が1000万元に達していることがわかりました。
D社の行為は「不正競争防止法」の関連規定に違反しており、太倉市市場監督管理局は法に基づきD社に違法行為の停止を命じ、D社に対して罰金200万元(日本円約4400万円)の行政処罰を行いました。 E氏、F氏、G氏は商業秘密侵害罪により、司法機関で裁かれました。
事例4:浙江省杭州市市場監督管理局
H氏の商業秘密侵害事件
H氏は浙江某会社(以下、権利者と略称する)のシニア技術専門家で、在職中、権利者との間で締結した秘密保持契約、会社規程及び等級別秘密保持管理制度に何度も違反し、暗号キーを漏洩し、さまざまな名義を偽って厳格な秘密保持研究開発サーバー内にある関連技術コードを秘密保持要求の低いサーバー内に分割して移転していました。
退職後も、権利者の許可を得ずに、権利者暗号キーを無断で使用し、事前に転送していた技術コードを含む商業的価値の高い文書をサーバーからダウンロードし、このダウンロード行為が権利者の内部監視システムにより発見されました。
ダウンロードした技術コードはビデオコードと強化された関連技術であり、権利者が提供した非公知的な鑑定意見と研究開発記録によると、技術コードは一般に知られていない技術情報でした。
H氏の行為は「不正競争防止法」の関連規定に違反しており、杭州市市場監督管理局は法に基づきH氏に違法行為の停止を命じ、H氏に罰金30万元(日本円約660万円)の行政処罰を下しました。
事例5:広東省広州市番禺区市場監督管理局
広東某技有限会社の営業秘密侵害事件
広東某科技有限会社(以下、I社と略称する)は広州の某バイオテクノロジー社(以下、権利者と略称する)の代理店として、秘密保持義務と競争禁止規定に違反し、従業員にプログラムコードを自作させて、インターネットを通じて遠隔で権利者のOAシステム内の顧客や注文情報などの資料を入手し、選別した後、自ら開発した「知能システム」へ導入し、上記の顧客情報を使って権利者と同種の製品を販売しました。
鑑定機関の鑑査を経て、I社は上記の顧客情報を使って5万余りの伝票を成約し、利益が21788783.29元(日本円4億8千万円でした)にのぼることが判明しました。
司法鑑定機関により、上記顧客情報は権利者の営業秘密に属すると認定され、事件の処理期間、法執行機関は権利者と密接なコミュニケーションを保ち、I社と権利侵害賠償問題を積極的に協議するよう指導し、双方は最終的に合意に達し、I社は権利者に1900万元(日本円約4億2千万円)を返還しました。I社の行為は「不正競争防止法」の関連規定に違反しており、広州市番禺区市場監督管理局は、法に基づきI社に違法行為の停止を命じ、I社に対して罰金400万元(日本円約8800万円)と違法所得没収の行政処罰を下しました。