引用商標の馳名度及び係争商標の登録悪意を主張し、17年間商標登録されていた係争商標の無効に成功

2023/06/08
2023/06/30

品源が代理し成功した商標事件の事例をご紹介します。
引用商標が係争商標の出願日前から馳名商標であることが認められ、係争商標の登録における悪意も認められ、17年前に登録された係争商標を 無効にすることができました。
本件は、中国商標法第45条1款の「悪意のある登録に対する無効審判請求について、馳名商標権者は5年の期間制限を受けない」という規定が適用された事例になります。

日本企業の多くの皆さまが中国での冒認出願に悩まされているかと思います。
中国では近年悪意ある商標登録の取り締まりを強化していますので、登録から時間が経っている商標であっても、馳名度や悪意性などが認められば冒認商標を無効にできる可能性があります。
ご参考になれば幸いです。

事件概要:
係争商標:「AOPU奥普」
出願日:2004年8月12日
登録日:2006年12月21日
登録番号:第4217372号
商標権者:尊貴電器社
区分:第9類:電源材、電気コネクタ、電気スイッチ、コンセントカバー、制御盤(電気)、プラグ及びその接触器、配電盤(電気)、安定器、ブレーカー、集積回路


引用商標1:「奥普」
出願日:1993年9月4日
専用権期限:2025年2月20日

登録番号:第730979号
商標権者:奥普社
区分:第11類:照明器具、暖房器具、排気ファン、照明による暖房、排気ファン一体機

引用商標2:「奥普」
出願日:1997年4月16日
専用権期限:2028年6月27日
登録番号:第1187759号
商標権者:奥普社
区分:第11類:浴用ヒーター; 熱気シャワー装置; キッチンコンロ; 電気調理器など

係争商標「AOPU奥普」(第4217372号、第9類)は2006年に商標登録された商標です。下記プロセスを通じて、2022年にようやく17年間の商標登録期間を経て係争商標を無効とすることができました。

2006年 係争商標に対し異議申立提起(維持決定)
2019年 三年不使用取消審判
2020年 無効審判請求
2020年 三年不使用取消決定に対する不服審判
2021年 無審審判行政訴訟(一審)
2022年 無効審判行政訴訟(二審)

判決要旨
1.馳名度の判断

・奥普社の販売数ランキング、収益状況、先行判決などの証拠から、奥普社の「浴霸」(バスルームヒーター)製品の生産数は年々上昇し、1999年の販売収入は億元を超えて、販売エリアも中国全国の多くの地方都市を網羅していることがわかる。
・広告の投入や宣伝状況から分かるように、奥普社は「奥普」商標に対して様々な形式で宣伝を展開している。その影響は中国全国に広がっており、1996年に「1996年中国市場公認著名ブランド」、1997年に「1997年買い物NO.1ブランド」、2001年に「2001年杭州市著名ブランド」、などを獲得している。また、熱気シャワー装置、浴用ヒーター商品において馳名商標として司法認定もされている。
・上記の証拠を総合的に考慮し、馳名商標の「必要に応じて認定する」原則に基づき、引用商標2が係争商標の出願日前に「浴用ヒーター」商品において馳名度を有していたと認定する。

2.悪意の判断
・係争商標とと引用商標2は文字の構成、外観、呼称が基本的に同一であり、引用商標2の複製、模倣を構成している。「奥普」は造語で、「浴用ヒーター」の商品上で強い識別力を有している。このような状況の中で、係争商標出願人が引用商標2と高度に近似した商標を登録することは偶然とは言えない。
・引用商標2は係争商標の出願日前に馳名商標となっており、係争商標の出願人も奥普社と同じ浙江省で、地理的な位置が近く、引用商標2の知名度は出願人の所在する地域範囲に及ぶことができる。
・「浴用ヒーター」商品と係争商標が使用されている「コンセントプラグ及びその接触器、スイッチ」などの商品は、生産部門、販売ルート、消費対象などが密接に関連しており、両者の関連公衆も大きく重なっている。引用商標2が極めて高い知名度を有し、馳名商標を構成していることを踏まえると、近似度の高い係争商標を上記商品に使用することは、関連公衆に連想させやすく、商品の出所を誤認しやすい。
・一部の関連公衆は商品の出所を誤認することはないが、関連公衆の前記連想は、引用商標2と奥普社が提供する「浴用ヒーター」商品との固有のつながりを分断し、奥普社の馳名商標の識別力を損なう結果となり、奥普社の合法的権益が損なわれる。
・これらの要素を総合的に考慮すると、係争商標の登録出願には悪意がある。

3.まとめ
・したがって、引用商標権者である奥普社の無効審判請求には 5 年の期限を設けず、係争商標を無効とする。

    

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