新たな動向――「新商標法」による「三年不使用取消審判」制度の抜本的な再構築

2026/10/29
2026/10/29

新法の動向

2026年6月26日、第14期全国人民代表大会常務委員会第23回会議において、改正商標法が可決され、2027年1月1日より施行されます。
今回の改正は、1983年の商標法施行以来、初めての全面的な改正となります。
今回の改正では、商標の実際の使用を重視し、商標の悪意ある出願・登録や商標の買い占め・大量保有行為を抑制するという重要な方針が示されています。

今回の改正では、商標の使用に関する規定が構造的に見直され、商標の使用に関する定義が旧法第48条から総則へ移されました。また、法律上初めて、商標の使用には、インターネット等の情報ネットワークを通じて行われる使用行為が含まれることが明確に規定されました。
実際の使用と密接に関連する三年不使用取消審判制度は、商標登録者に商標を実際に使用させ、その商標としての機能を発揮させるとともに、商標資源の遊休化や浪費を防止することを目的としています。

今回の改正ではさらに、国務院商標管理部門が、職権により3年間連続不使用による取消し(撤三)および登録商標が指定商品の一般名称となったことによる取消し(撤通)を行うことができる制度も新たに導入されました。これにより、商標管理部門が主体的に使用されていない商標を整理し、市場における商標資源を有効に活用することが可能となります。

条文比較

2019年改正法条文 2026年改正新法条文
第48条
本法にいう商標の使用とは、商標を商品、商品の包装又は容器及び商品取引文書に使用すること、又は商標を広告宣伝、展示及びその他の商業活動に使用して、商品の出所を識別する行為をいう。
第2条第2款
本法にいう商標の使用とは、商標を商品、商品の包装又は容器及び商品取引文書に使用すること、又は商標を広告宣伝、展示及びその他の商業活動に使用して、商品及び役務の出所を識別する行為をいう。

第3款
前項にいう商標の使用には、インターネット等の情報ネットワークを通じて実施される使用行為を含む
第49条第2款
登録商標がその指定商品の一般名称となった場合、又は正当な理由なく連続して3年間使用されていない場合、何人も商標局に対して当該登録商標の取消しを請求することができる。商標局は、請求を受けた日から9か月以内に決定を行うものとする。特別な事情がある場合、国務院工商行政管理部門の承認を受けて、3か月間延長することができる。
第57条第2款
登録商標がその指定商品の一般名称となった場合、又は正当な理由なく連続して3年間使用されていない場合、何れの単位又は個人も国務院商標管理部門に対して当該登録商標の取消しを請求することができる。国務院商標管理部門は、請求を受けた日から9か月以内に決定を行うものとする。特別な事情がある場合、国務院商標管理部門の責任者の承認を受けて、3か月間延長することができる。

第3款
登録商標に前項に規定する状況がある場合、国務院商標管理部門は、職権により当該登録商標を取り消すことができる。具体的な実施方法については、国務院商標管理部門が定める。

実務動向

1.出願人の立証責任が高まる

近年の実務では、中国国家知識産権局が「三年不使用取消審判」請求に対して補正通知を発行するケースが大幅に増加しています。
従来、不使用取消審判の請求に際しては、対象商標について簡単な初歩的調査を行い、その結果を提出すれば足りるケースが多く、実際の使用に関する主な立証責任は被請求人である商標権者側にあると考えられていました。
しかし、近年は、中国国家知識産権局からより具体的な調査内容や証拠調査・収集状況について、追加資料の提出を求められるケースが増えています。
こうした実務の変化により、不使用取消審判請求は、単に形式的な調査結果を提出して手続を開始するものではなく、請求前の段階から対象商標の使用状況について一定の実質的な調査・証拠収集を行うことが求められる傾向にあります。
したがって、今後不使用取消審判を請求する場合、請求前の調査内容や調査過程についても適切に記録・保存しておくことが、より重要になると考えられます。

2.商標権者側の答弁における証拠基準も厳格化

不使用取消審判請求に対する答弁において、販売契約書や請求書・領収書等は、従来から商標の使用を立証する主な証拠とされてきました。しかし、近年の実務では、これらの証拠についても、その証明力が厳しく判断される傾向が見られます。
例えば、販売契約書や請求書等の記載だけでは、対象となる登録商標と実際の販売商品との対応関係を明確に確認できない場合、当該証拠の証明力が大きく低下する可能性があります。実際に、裁判所がこの点を理由として、提出された証拠を商標の使用証拠として認めなかった事例も見られます。
このように、不使用取消審判案件では、単に販売契約書や請求書等を提出するだけでは十分とはいえず、提出した証拠が対象商標の使用に直接結び付いていることを明確に示すことが重要となっています。
したがって、商標権者側としては、契約書、請求書、販売記録、商品写真、広告資料等を保存する際にも、「いつ、どこで、誰が、どの商品について、どの商標を使用したのか」を確認できる形で証拠を体系的に管理しておくことが重要です。

3.商標管理部門による職権による取消しが可能に

今回の商標法改正では、国務院商標管理部門に対し、一定の登録商標について職権により取消しを行う権限が付与されました。
従来の制度では、使用されていない登録商標について取消しを行うためには、原則として第三者からの取消請求が必要でした。そのため、実際には使用されていない商標や、悪意をもって大量に登録・保有された商標が長期間市場に残り、商標資源が占有されることが問題となっていました。
今回の改正により、正当な理由なく連続して三年間使用されていない登録商標について、第三者からの請求提出を待たずに、商標管理部門が職権により取消しを行うことが可能となります。

4.今回の改正の意義

今回の改正では、商標制度において大きく3つの変更が行われました。

(1)商標の使用に関する定義が総則に移され、その制度上の位置付けがさらに高められました。これは、商標の実際の使用価値を重視するという立法上の方向性を明確に示すものといえます。
(2)商標の使用には、インターネット等の情報ネットワークを通じて行われる使用も含まれることが初めて明確に規定されました。これにより、情報化・デジタル化が進む現在の取引環境を踏まえ、商標の実際の使用をより適切に認定・保護するための法的基盤が整備されたと考えられます。
(3)国務院商標管理部門に職権による取消権限が付与されました。これにより、実際に商標を使用する事業者のために、使用されていない商標を整理し、商標資源をより有効に活用することが期待されます。

さらに、これらの制度変更に加え、中国国家知識産権局が公式サイト上に開設している「心機商標(悪意ある商標)」の通報窓口などを通じて、中国国家知識産権局による職権に基づく管理も強化されています。これまでの受動的な対応から、行政が主体的に市場を管理する方向へと変化しているといえます。
今後、商標を悪意をもって冒認登録したものの、使用しない行為に対するリスクは高まり、商標を大量に保有することによって利益を得る余地も縮小していくことが予想されます。

現在は新旧法の過渡期にあるため、商標出願人・商標権者は、今後の制度変更を踏まえて、早い段階から商標の登録・使用方針を見直しておくことが重要です。
特に、商標を登録するだけでなく、実際の使用状況を適切に管理し、その使用を裏付ける証拠を体系的に保存しておくことが重要となります。
こうした日頃からの証拠管理を徹底することで、将来的に不使用取消審判を請求された場合においても、商標の実際の使用を適切に立証し、自社の商標権を守ることにつながります。

作者:品源法律事務所 李琳 

    

Contact

お問い合わせ

中国での知的財産権に関するお問合せは以下よりお願いいたします。

お電話でのお問い合わせはこちら

平日10:00~18:00まで。
営業目的のお電話はご遠慮ください。

フォームからのお問い合わせはこちら

詳しいご相談をされたい場合は
お問い合わせフォームをご活用ください。