品源が代理した案件が中華商標協会2021-2022年商標代理モデル事例として選出されました。

2023/08/18
2023/08/22

2023年6月17日、第13回中国国際商標ブランド祭、中国商標年会が中国東莞で開催され、品源が代理した「BENTRE」商標権侵害事件が「2021-2022商標代理モデル事例」として選出され、表彰されました。

今回のモデル事例は、中国国家知識産権局関係司局代表、裁判所裁判官、著名な専門家学者などによる専門家審査チームが中国全国から報告された事例を審査し、選出されたものになります。

モデル事例紹介
――未登録商標の使用において先使用権抗弁が適用された事例――

本件は、中国で長年使用されていたものの、登録出願しなかった商標の使用行為において、悪意ある第三者による後から登録した商標権に対して、「商標法」第59条第3款*¹の先使用権抗弁を適用したモデル事例です。

(一)概要

広西東興富華食品輸出入有限公司(以下「富華食品社」)はベトナム東アジア総合生産経営有限責任公司(以下「ベトナム東アジア社」)の中国における独占代理店で、1996年から、ベトナム東アジア社からの輸入を開始し、中国大陸で「BENTRE槟椥」の商標を付したココナッツシュガー製品(製品包装は下図)を、原告(商標権者)が訴訟を提起する日まで20年余り販売していました。

富華食品社が販売していた、「BENTRE槟椥」ココナッツシュガー製品

原告(商標権者)は2016年1月8日に「 」商標(以下「係争商標」)を登録出願し、2017年2月14日に30類の「コーヒー、お茶、砂糖」などの商品での登録が認められました。
富華食品社は「 」の商標を付したココナッツシュガーなどの製品を輸入し、その他二被告は「 」の商標を付したココナッツシュガーなどの製品を販売していたため、原告の商標権侵害の疑いがありました。

(二)原告(商標権者)の主張

原告は海口市琼山区人民法院に、三被告に対する商標権侵害紛争訴訟を提起し、裁判所に対して以下の判決を求めました。

  • 富華食品社が製品と包装に「 」商標を使用することを直ちに中止し、すべての権利侵害製品を放棄すること。
  • 他の二被告は、「 」の商標権を侵害する商品の販売を中止すること。
  • その経済的損失と合理的支出として、被告に対して合計10万元の賠償を請求し、被告は本件訴訟費用などを負担すること。

 

(三)被告(富華食品社など三被告)の抗弁

富華食品社など三被告は以下のように抗弁を行いました。

  • “BENTRE槟椥”商標は、ベトナム東アジア社が創設したココナッツシュガーブランドで、1990年代からココナッツシュガー製品に使用されている。1996年1月から、ベトナム東アジア社は、富華食品社の前身である会社と「BENTRE槟椥」ココナッツシュガーの中国販売総代理店としてのライセンスを結び、中国への“BENTRE槟椥”ココナッツシュガーの輸出を始めた。富華食品社が設立された後、富華食品社はベトナム東アジア社と総代理契約を更新し、中国市場での上記商品の販売を継続した。
  • 20数年の販売と使用を経て、「 」商標が付されたココナッツシュガー等商品は、2016年に原告が係争商標を出願するよりも前から、一定の知名度と影響力を有している。
  • したがって、被告の被疑侵害行為は、「商標法」第59条第3款の先使用権抗弁のすべての要件を完全に満たしており、原告には後の商標権利者として、被告が元の範囲内でBENTRE商標を使用し続けることを禁止する権利がない。
  • また、原告の係争商標はすでに国家知識産権局により、無効審判の裁定において全商品で無効と宣告されている。理由は「商標法」第30条*と第44条第1款*の「不正な手段で先に登録する行為」の規定に違反しているからである。
  • したがって、先使用権抗弁を除いても、原告が本件訴訟を提起した基礎的権利には瑕疵がある。

 

(四)裁判結果

・一審裁判所は原告の訴訟請求をすべて棄却しました。
原告は一審判決を不服として上訴しましたが、 二審においても原審が維持されました。

 

(五)品源のコメント

ベトナム東アジア社が生産するBENTREココナッツシュガーは、甘くてココナッツの香りがする四角いキャンディーで、中国人の「子供の頃の味」として、その世代の人たちに親しまれています。
弊所の弁護士も、この「子供の頃の味」に親しみがあり、一段と強い想いで今回の訴訟に挑みました。
本件を代理するにあたり、弊所では、数千ページの先使用証拠、ベトナムの商標権証明書、中国の意匠登録証明書、出入国検査検疫証明書、税関通関申告書、送り状、注文書などを提出しました。
本件のように先使用権抗弁を主張する場合、商標の先使用者は後願の商標出願日前に、当該商標が使用されており、一定の知名度を有していることを証明する証拠を大量に提出しなければなりません。それにより、先使用権の範囲内でその商標を使用し続ける権利を得ることができます。
また、後願の悪意ある商標登録に遭遇した場合は、積極的に使用証拠を集めて抗弁すると同時に、後願商標に対して無効審判を提起し、係争商標を根本的に無効にし、使用障害を完全に取り除く必要があります。

*¹「商標法」第59条第3款
商標登録者が商標登録を出願する前に、他人が既に同一又は類似の商品について、商標登 録者よりも先に、登録商標と同一又は類似し、かつ一定の影響を有する商標を使用しているときは、登録商標専用権者は、当該使用者が元の使用範囲において当該商標を引き続き使用することを禁止する権利を有しない。ただし、適切な区別用標章を加えるよう要請することができる。

*中国商標法については、以下のJETROによる日本語訳をご参照ください。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20191101law_2_jp.pdf

出所:https://mp.weixin.qq.com/s/ntBI1iMV2ZS2BRjJODrJRA

    

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