国家的、社会的利益を考慮して、中国専利法では専利(ここでは主に特許)を付与できる技術の範囲に一定の制限を設けています。
中国専利法第5条では、法律、社会公徳に反し、または公共の利益を害する発明創造に対しては、専利権を付与しないと規定しており、法律または行政法規の規定に違反して取得または利用された遺伝資源に依拠して完成した発明創造に対しては、専利権を付与しないと規定しています。
中国専利法実施細則第26条第1款の規定によれば、専利法にいう遺伝資源とは、人体、動物、植物、微生物等の遺伝の機能的な単位を含む材料に由来し、実際の価値又は潜在的価値を有するものをいい、専利法にいう遺伝資源に依拠して完成した発明創造とは、遺伝資源の遺伝の機能を利用して完成された発明創造をいいます。
具体的には、上記規定でいう遺伝の機能とは、生物が繁殖を通じて形質または特性を世代から世代へと引き継ぐ能力、または生物全体を複製する能力を意味します。遺伝の機能的な単位とは、生物の遺伝子、または遺伝の機能を有するDNAの断片もしくはRNAの断片をいいます。人体、動物、植物、微生物等の遺伝の機能的な単位を含む材料に由来するとは、遺伝の機能的な単位の担体を意味し、生物全体と、臓器、組織、血液、体液、細胞、ゲノム、遺伝子、DNA断片またはRNA断片などの生物の特定の部分の両方を含む。遺伝資源の遺伝の機能を利用するとは、本発明を完成し、その遺伝資源の価値を実現するために、遺伝の機能的な単位を単離、分析、加工等することをいいます。
法律及び行政法規の規定に違反して遺伝資源を取得又は利用することとは、遺伝資源の取得又は利用が、中国の関連法律及び行政法規の規定に基づき、関連行政当局の事前承認又は関連権利者の許可を得ていないことをいいます。
例えば、『中華人民共和国畜産法』及び『中華人民共和国における家畜・家禽遺伝資源の輸出入及び対外共同研究利用に関する審査認可弁法』の規定によれば、中国の家畜・家禽遺伝資源保護リストに含まれる家畜・家禽遺伝資源を他国に輸出する場合、関連する認可手続きを経なければなりません。中国から外国に輸出した、中国の家畜・家禽遺伝資源保護リストに記載された家畜・家禽遺伝資源に依存して発明を完成し、認可手続きを経ていない場合、その発明は専利を付与できません。
著者:北京品源 Tao Ning